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ナナノナノカカン
第10章 ナナナノジュウ@キイテカイテ
もし、汚い姿から戻れなくなったら―
あの、気が狂いそうな感覚――それがずっと終わらなかったら。

おかしくなっちゃう。

おかしくなっちゃったら?
おかしくなって、戻れなくなったらどうすれば―?

秋景は、その心地を知らないでしょう?
だから怖いの、傍に居てくれても―不安になる。

私だけが狂っていく。
――私だけが狂っている?

行かないで。行かないで。

「ナナ、泣かなくていいよ―」
「怖いのに、怖いのに―気持ちよくて、
 私おかしくなったんだって」

秋景はナナの涙を指で掬い取り、
目を擦ろうとする小さな手を握った。

「擦ると腫れる、大丈夫――
 ―堕ちても、ちゃんと元の場所まで連れて帰るから」

「俺は―こう見えても無責任なことはしないし
 割と几帳面なんだぞ」

「散らかせば片づけるし、壊してしまったら直すよ。
 迷っても、ちゃんと帰るし―堕ちたら、背負って帰るから」

ナナが落ち着くまで、
秋景はずっと優しくその身体を撫でながら言葉を紡いだ。

「怖がりながらでも―おいで」

「ナナが憧れていたもの、欲しかったもの―
 ―俺が、与えてあげられる筈だ」
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