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綺麗に汚れて
第2章 秘密の夜
 


部屋に戻ると、やっぱりまだ相変わらず。

ヒロくんと加藤くんは空気を悪くするだけの話し合いをしていたけど、もうこの空気が面倒だとは思わなかった。


「……ふふ…」


ジッと彼を見つめる私。

そんな私をたまにだけど彼は見て小さく微笑み、目を逸らす。

みんなが気まずい雰囲気に俯いている中、秘密の遣り取りをしているようで、それが嬉しかった。


名前も知らないなのにね。

私はまだ、彼の唇しか知らない。

なのにもう彼が気になって仕方なかった。

今、彼と同じ空間にいれることが嬉しかった。


「……分かったよ…分かった分かった…」


少しして話が纏まったのか、投げ遣りになったのか、それとも酔いと共に怒りの熱も冷めたのか、ヒロくんがそう言った。


「ふぅ。…綾乃、サヤカ。ほんとにごめんな?もう暗い話は終わりにするからっ!飲もう飲もう!」


そして加藤くんがもうすっかり氷が溶けてなくなっているグラスに入ったお酒を手に取り、場を和ますように笑顔を作って言った。

だけどすぐにまた楽しく飲み会!なんて雰囲気になるわけもなく、私はチラッとヒロくんを見ると目が合った。


「あ…綾乃、ごめんな?変なところ見せて…」

「う、ううんっ…」

「……ってかさっき、アキラと長々トイレ行ってたよな?」

「え…?」


アキラ…?


「アキラー。俺の綾乃に手ぇ出してねぇだろうなぁ?」


アキラって……ってか俺の綾乃って…

ツッコみどころが多すぎて、まず何から言えばいいのか分からないけど、とりあえずヒロくんもヒロくんなりに気を使って、冗談めいた口調で気まずい空気を和ませようとしているようだ。


「何?俺のって。あはは…知らなかったよ。この子、ヒロの彼女だったんだ?」

「ち、違う!!!」

「あはは…全力で否定されてやんの。ヒロ残念。」


さっきキスしてきた癖に…

『この子』って…

何もないって顔して笑うなんて…


「………アキラくん。」

「ん?」

「アキラくんっていうんだね。名前…」

「そうだよ。」

「……私、綾乃。この子じゃないよ?」

「あはは…ごめんね。」

「…………」


読めない男…



 
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