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可奈さん
第6章 風
「そうと決まれば行こうよ」


可奈さんは俺の返事も聞かずにバイクの方へさっさと歩きだした。


……

行かねばなるまい。
どんなお友達なんだ。






列をなした車が駐車場に入ってくる。

俺達は再び走り出し、茜色の空に向かう。


「ねえ見てほら、富士山」


夏場にはなかなかお目にかかれない富士山が、夕暮れの裾をきりりと引き締める。


「いい事ありそー」

「ありますよ。
これから先はいい事ばかりです」

「そうかな」

「そうです」

「…ありがとう」



俺が傍にいます。
いつでも笑わせてあげます。


困らせる事はしない、言わない、と決めていた一日がもうすぐ終わる。

胸を熱くする痛みと、背中に伝わる可奈さんの温もりで息苦しい。

俺は自分の気持ちを切なく見据え、134号線に別れを告げた。





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