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可奈さん
第6章 風
「どこにも連れてってもらえなかったな」


遠い眼差しで可奈さんが呟いた。


俺ならいつだって…


「拓也さん、次は新しい彼女ときなよ」


俺をみてニコッと笑う。


「え?」

「きっと喜ぶよ~」

「……」


ひやかすようなその口調に、気持ちはガックリと肩を落とす。


「可奈さん、風が冷えてくるから、陽が沈む前にここを出たほうが…」


めげずに話題を変えよう。帰りに何かご馳走したい。


「そうだね。
バイクからも見えるし。
あ、今日のお礼をしなきゃ」

「いえ、お礼なんて」

「あはは…、気にしなくていいわよ。友達が定食屋さんやってるの。なかなかおいしいのよ。そこでお腹いっぱい食べてもらうから」

「え…それってどこにあるんですか?」

「職場の近くなの。
だから時々食べに行くのよ」

「はあ…」


友達って…、男?




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