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可奈さん
第11章 葛藤
なにもかもが楽しい。

朝起きる事も、洗濯や掃除も。それにバイト。いつもやたら無愛想な客への配達も、俺は張り切ってバイクを走らせた。

曇りだろうが雨だろうが気持ちはウキウキ。可奈さんの事を考えて1日を過ごす。

季節柄、仕事が忙しくなってきた彼女とゆっくり会う事は出来ないけど、それでも偶然を装って"たかひら"で会えた。俺が休みの日、昼間に限ってだけど。

夜にメールの返信を確認して"おやすみ"を云うのが目下の幸せ。


「おい、……おいタク!」

「ん?」

「俺の話聞いてる?」

「え、なんだっけ」

「だから飲み会だよ飲み会っ!」


木田が太い声を張り上げる。


「いつだっけ」

「来週の水曜だろっ」

「あぁ、なるほどね」

「俺、葉月ちゃん連れて行くからな」

「まじで?」

「他にも女の子来るぞ、葉月ちゃんの友達だけど」

「ふーん、合コンみたいなもんか」

「なんだ、嬉しくないの?」

「いや…」


早番で上がる木田は、汗ばんだシャツを着替えてから俺の顔を覗き込んだ。


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