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可奈さん
第13章 思い込み
開け放たれた門を入ると、懐かしい空気が一気に身体を包み込んだ。

駐車場の奥にある二階建ての建物が、部外者を冷たく監視しているように見える。

ひとりでは開けられなかった重い鉄の扉。
ボールをぶつけて遊んだ壁。
チャリンコを練習した駐車場。


「こんなに狭かったっけ……」


ここが遊び場じゃなくなったのはいつからだろう。大好きな場所だったのに。

ガチャリと扉が開いて、中から作業服の男が出てきた。


「あ……」

「あれ? もしかして……拓也君か?」

「松井さん?」


よくキャッチボールの相手をしてくれたおじさんだった。


「大きくなったなぁ、親父さんと同じ位か?」

「俺の方が高いです」

「あはは、そうか、だんだん似てきたなぁ、まだほんの子供だったのに。俺が年を取るわけだ、な、あははは」


笑い声がすっげぇ懐かしい。


「煙草吸いに出て来たんだけど、付き合う?」

「はい」


俺は松井さんと2人、壁の隅にある喫煙所で立ち止まった。


「ここ懐かしいだろ」

「はい」



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