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可奈さん
第13章 思い込み
「きっと、可奈さんの実力が買われたんですよ」

「それはあるだろうな」

「ステップアップできるって凄いですよね」


胃の辺りが重いのは、さっきのかつ丼のせいだろうか。大盛りだったし。

首筋から背中に汗が滲んでいるのがわかる。指先は小刻みに震えていた。


「明日はバイトがあるのでそろそろ帰ります」

「お前、大丈夫か?」


金を置いて立ち上がった俺を見上げ、心配してくれる修平さん。


「ええ、何もわからないのに落ち込んでもしょうがないですよ、ハハッ」


憶測で物事を捉えると、とんでもない誤解を招く。そうだ、親父のあの時の事がそうだったじゃないか。


「バイクだろ、気を付けて帰れよ」

「ありがとうございます。ごちそうさまでした。麻由さん、ごちそうさまでしたー」


慌てて出てきた麻由さんに会釈して、俺は外に出た。

息が白くなった。

喜び勇んで来た1時間前と、崩れそうな今の俺。

俺はどうしても可奈さんに会いたくて、"ブティック雅"に行ってみることにした。



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