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可奈さん
第5章 来訪者
人が亡くなるってこういう事なのか…

自信ありげなアイツの姿も「可奈」と呼び掛ける余裕の表情も、もう見ることは出来ない。

虚しい空間に幻を捜し、聴こえない声を求める可奈さんの気持ちがいたたまれない。


「だいぶ涼しくなってきたわね」


タオルをしまってきた可奈さんの後に続いてリビングに入った。

西日が傾いて夕暮れ間近なその部屋は、飾り気のないシンプルなものだった。
テレビ、ソファ、木目調のローテーブル、薄いベージュのラグ。白い壁に正方形の木枠の時計。

かつて男がいたという事も、ここに誰かが住んでいるということさえ感じられない、モデルルームみたいなしらけた静けさ。

キッチンの方から、ポットがお湯が沸いたよ、と音を立てるまで、俺はピザを持ったまま、そこに居たはずの男を捜した。




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