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可奈さん
第5章 来訪者
対面式キッチンの向こうから「どうぞそこに掛けて」という可奈さん。2人用の白いダイニングテーブルにピザをのっけて椅子を引く。


「ここに座っていいんですか?」

「ええどうぞ、もう誰の席でもないから」


そんな言葉をすらすらと吐く。

氷の入ったグラスをテーブルにのせ、注いだそばからボワボワと増えるコーラの泡に「みてみて」と笑う可奈さんがかわいい。


「あ、ごめんなさい、悪いけどカーテンを閉めてもらってもいいかしら?」

「はい」


ソファの前を通りレースのカーテン越しに外を見た。


………


不思議な感覚だった。

団地のあちこちに家庭の明かりが見える。
踊り場から見つめているだけだったバルコニーの内側に、今俺は可奈さんといる。

向こう側の自分に、お前ここにいるんだぜ、とカッコつけて呟き、若草色のカーテンを左右から引いて胸の真ん中でピタリと閉じた。


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