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可奈さん
第5章 来訪者
「やっぱり美味しいね、これ」


向かい合い、ピザを頬張っている可奈さんは、顎にチーズが付いているのに気づかない。シーフードでもよかったんだと胸を撫で下ろしつつも、目の前でもぐもぐと動くとがった顎とほっぺ、小さく閉じられた艶のある唇がやたら気になる俺。


「あのさ」

「はい」

「顎にチーズ付いてる、ふふっ」

「あ、どうも」


差し出された紙ナプキンでごしごし拭き、「可奈さんも付いてます」と言って別のナプキンを渡す。


「やだ、早く言ってよ」

「すみません」

「許す、ふふっ」


可奈さんはチーズを拭き取ると、肩をすくめていたずらな笑顔をこぼした。

ヤバイ、可愛すぎる。


「どうして私の名前が可奈って知ってるの?」


小首をかしげ、まあるい眼で俺の答えを待っている。 このままその視線を浴び続けたら、どうにかなってしまいそうだ。

たとえばキスをするとか…



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