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Could you walk on the water ?
第20章 盗聴
「爆発のとき、あなたは式典会場にいて、来賓の皆様と談笑されていた。社長が爆死した現場にいなかったことは明らかだ。ただ、その計画に深く関わっていた。つまり、殺人行為を共同で行ったという疑いを我々は持っているんです」
刑事の言葉に、沙織はしばらくの間沈黙を貫き、そしてふっと笑みを浮かべた。
どのような男でもその微笑みを見れば、降伏してしまうのだろう。
そんな類の微笑を、沙織は刑事に披露した。
「刑事さん、おっしゃっていることはわかります。ただ、私がその計画とやらに参加したっていう証拠があるのかしら。爆弾の知識なんてこれっぽちもない私が」
「別に爆弾の知識がなくても、動機があれば十分です」
「動機?」
「堀内さんを殺したいっていう動機ですよ」
話しを続けながら、広瀬は小型の再生レコーダーをテーブルに乗せた。
「私たちは、あなたが前の夫、大介さんと一緒になって堀内社長を殺害したのだとずっと考えていた。大介さんは堀内さんとは浅からぬ因縁があり、奥さん、つまり沙織さんも巻き添えにされて、ひどい仕打ちを受けた。収監するはめになったのも、彼が原因だ。復讐したいという、強い意志は当然あったはず」
「だったら彼を調べればいいでしょう・・・」
「勿論そうしましたよ。しかし、大介さんは何も言わなかった。明らかに何かを隠しているような素振りでしたけどね。我々は爆弾の設置経緯なども調べ上げた。しかし、工事関係者にはそれを入手できそうな人間がいくらでもいます。そちらの捜査も難航し、やがて、私たちは完全に行き詰った」
「・・・・・・・・・・」
「はずでした」
「はずでした?」
沙織の表情に、僅かな緊張が走った。
「はずだったんです。迷宮入り間違いないと。しかし、これが突然届いたんです。匿名の住民からね」
広瀬の視線は、テーブル上に置かれた小型再生レコーダーに注がれている。
「沙織さん、一緒にこれを聞いていただけますか。収録されたのは、まだ先月のことです。あなたが経済紙のインタビューにお答えになった、あの日の深夜だ」
「・・・・・・」
「あなたたちの関係に気付かなかった我々がうかつでした」
未亡人の表情の確かな変化を見つめながら、広瀬はそっと再生ボタンを押した。
刑事の言葉に、沙織はしばらくの間沈黙を貫き、そしてふっと笑みを浮かべた。
どのような男でもその微笑みを見れば、降伏してしまうのだろう。
そんな類の微笑を、沙織は刑事に披露した。
「刑事さん、おっしゃっていることはわかります。ただ、私がその計画とやらに参加したっていう証拠があるのかしら。爆弾の知識なんてこれっぽちもない私が」
「別に爆弾の知識がなくても、動機があれば十分です」
「動機?」
「堀内さんを殺したいっていう動機ですよ」
話しを続けながら、広瀬は小型の再生レコーダーをテーブルに乗せた。
「私たちは、あなたが前の夫、大介さんと一緒になって堀内社長を殺害したのだとずっと考えていた。大介さんは堀内さんとは浅からぬ因縁があり、奥さん、つまり沙織さんも巻き添えにされて、ひどい仕打ちを受けた。収監するはめになったのも、彼が原因だ。復讐したいという、強い意志は当然あったはず」
「だったら彼を調べればいいでしょう・・・」
「勿論そうしましたよ。しかし、大介さんは何も言わなかった。明らかに何かを隠しているような素振りでしたけどね。我々は爆弾の設置経緯なども調べ上げた。しかし、工事関係者にはそれを入手できそうな人間がいくらでもいます。そちらの捜査も難航し、やがて、私たちは完全に行き詰った」
「・・・・・・・・・・」
「はずでした」
「はずでした?」
沙織の表情に、僅かな緊張が走った。
「はずだったんです。迷宮入り間違いないと。しかし、これが突然届いたんです。匿名の住民からね」
広瀬の視線は、テーブル上に置かれた小型再生レコーダーに注がれている。
「沙織さん、一緒にこれを聞いていただけますか。収録されたのは、まだ先月のことです。あなたが経済紙のインタビューにお答えになった、あの日の深夜だ」
「・・・・・・」
「あなたたちの関係に気付かなかった我々がうかつでした」
未亡人の表情の確かな変化を見つめながら、広瀬はそっと再生ボタンを押した。