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Could you walk on the water ?
第20章 盗聴
「堀内沙織さん、殺人の疑いであなたを逮捕しなくてはなりません」
広瀬と名乗る刑事のことを、堀内沙織は勿論鮮明に覚えていた。
堀内工務店社長室に設置された壁時計は、ちょうど午前10時を示している。
「外してくれるかしら」
沙織は、室内にいた女性秘書にそう言うと、その刑事をソファが置かれた応接スペースに誘導した。
彼女の仕草に動揺は全くなく、まるで刑事がここにやってくることを想像していたようであった。
「殺人って、主人を殺したっていうのかしら」
「ええ」
広瀬はやや紅潮した表情のまま、目の前に対峙する社長にそう言った。
今や、この界隈では有数の財界人であり、その美貌と経歴も手伝って、注目を浴びている未亡人である。
堀内雄三の告別式前夜に会ったときの彼女の姿とは、まるで違うように見えた。
今の彼女には、絶対の自信があふれていた。
過剰とも言えるほどの、強烈な自信が。
そして、その自信が、40歳になる未亡人の美貌に更に磨きをかけていた。
「今まで、随分噂をされて、マスコミからも糾弾されたわ。財産相続目当て、会社乗っ取り、保険金目当ての殺人だ、彼をトンネルのあの場所に一人で行くように差し向けたのも私だってね」
「ええ」
「確かに、あそこで記念撮影をすることを提案したのは私です。何といっても夫の晴れ舞台でしたから。それぐらいの褒美はあってもいいのでは、と思いましたからね。結果的には、それが間違いだったんですが」
沙織は終始クールな様子で淡々と説明をした。
「でも刑事さん、どうして今頃になって突然いらしたのかしら。何か証拠でもおありですか。私が夫を殺したという証拠が」
「沙織さん、正確に言えば、雄三さんの殺人に対する共同正犯の疑いです」
「共同正犯?」
沙織の表情に、僅かに緊張が走った。
広瀬と名乗る刑事のことを、堀内沙織は勿論鮮明に覚えていた。
堀内工務店社長室に設置された壁時計は、ちょうど午前10時を示している。
「外してくれるかしら」
沙織は、室内にいた女性秘書にそう言うと、その刑事をソファが置かれた応接スペースに誘導した。
彼女の仕草に動揺は全くなく、まるで刑事がここにやってくることを想像していたようであった。
「殺人って、主人を殺したっていうのかしら」
「ええ」
広瀬はやや紅潮した表情のまま、目の前に対峙する社長にそう言った。
今や、この界隈では有数の財界人であり、その美貌と経歴も手伝って、注目を浴びている未亡人である。
堀内雄三の告別式前夜に会ったときの彼女の姿とは、まるで違うように見えた。
今の彼女には、絶対の自信があふれていた。
過剰とも言えるほどの、強烈な自信が。
そして、その自信が、40歳になる未亡人の美貌に更に磨きをかけていた。
「今まで、随分噂をされて、マスコミからも糾弾されたわ。財産相続目当て、会社乗っ取り、保険金目当ての殺人だ、彼をトンネルのあの場所に一人で行くように差し向けたのも私だってね」
「ええ」
「確かに、あそこで記念撮影をすることを提案したのは私です。何といっても夫の晴れ舞台でしたから。それぐらいの褒美はあってもいいのでは、と思いましたからね。結果的には、それが間違いだったんですが」
沙織は終始クールな様子で淡々と説明をした。
「でも刑事さん、どうして今頃になって突然いらしたのかしら。何か証拠でもおありですか。私が夫を殺したという証拠が」
「沙織さん、正確に言えば、雄三さんの殺人に対する共同正犯の疑いです」
「共同正犯?」
沙織の表情に、僅かに緊張が走った。