この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
甘いだけの嘘ならいらない
第7章 その温度さえあればきみを忘れることだってできたのに、
30分前ということは、少なくとも英士くんは、あたしと翔が何度もキスするところを見ていたってこと。
あたしが英士くんじゃない男の人に抱きしめられて、笑ってキスする、その瞬間を。
それから英士くんは、何事もなかったように、笑顔で言葉を続ける。
「映画、楽しかった?」
「…うん」
「よかったね。ごはんは、何食べたの?」
「中華…」
「そっか。よかった、入れ違いにならなくて」
「……うん。迎えに来てくれて、ありがとう」
精一杯微笑んだつもりだったけど、うまく笑えてるのかわからない。