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甘いだけの嘘ならいらない
第1章 だから僕はもう戻れない
初めての夜から一ヶ月も経たずに、あたしたちは同棲を始めた。
同じシトラスの香りのシャンプーに、お揃いのマグカップ、真っ白なベッドルーム。
大好きな彼との生活は幸せが溢れてた。
ひとりぶんだった朝ごはんも夜ごはんもふたりぶんを作るようになって、お料理のレパートリーもふえて、英士くんに褒められたくて彼の好きなものをいっぱい作った。
大きなすれ違いや揉め事もなく、英士くんと婚約したのは、大学を卒業した年の冬の始めの肌寒い夜だった。
大学卒業後、あたしはマンションから5駅離れた会社で一般事務の仕事をしていて、英士くんはまだ在学中。
働き始めて一緒に過ごせる時間は減ったけど、あたしたちは何も変わらなかったし、それはずっとこの先不変的なことだと根拠のない確信があった。