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甘いだけの嘘ならいらない
第6章 騙されてあげる、それは君が好きだから
自分でチェックを済ませた後は、ミスをゼロに近づけるために、他の人にもう一度ベリファイチェックをしてもらうのが社内の決まりだった。
電話応対が終わって手の空いた明日香に書類の束を持って行くと、明日香はあたしの顔を見て苦笑いを零す。
「理紗、だいじょぶ?なんか、週明けなのにお疲れモードじゃない」
「あ、うん…ちょっと色々と考え事があって」
「そっか。ま、あんまり考えすぎてよけい悩まないようにね。なるようになるでしょ」
桐谷 明日香は入社してからの友達で、おおらかで明るく、あまり悩んでるところを見たことがない。
彼氏と別れたって報告されたときでさえ、飄々としていて、もともと彼に依存するようなタイプじゃなかったもんね、と妙に納得してしまったくらい。
「そうだよね。ん。ありがと、明日香」
「いーえ。今日は残業せずに帰れるんだし、ゆっくりお風呂でも入ってリフレッシュしなよね」
明日香は人当たりのいい笑顔を向けて、気分転換は大事だよ、と言いながら書類の束を受け取った。