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甘いだけの嘘ならいらない
第6章 騙されてあげる、それは君が好きだから
「えっと、その、くせで……だって、会社行ってたから、まだなんか仕事の気分が抜けてなくて」
『あ、そ。まあいいけど。で、何食べたい?何でもいいとか、俺の食べたいもので、とかはナシな』
あたしの心を見透かしたように笑って、翔はあたしの答えを待った。
「え、選んでいいの?」
『当たり前だろ?遠慮するなよ』
ほんのちょっとのことで、翔の言動にあたしは一喜一憂してる。
いじわるされたって、いたずらされたって、泣かされたって、結局は翔の優しさにほだされてしまう。
「じゃあ…中華、食べたい……」
『おっけ。もう着くから』
うん、と答える間もなく、カウンターの前の窓ガラスがこんこんと叩かれて、あたしは思わず笑みを浮かべる。
飲み終わったカップを捨てて、翔の前まで行くと、ぎゅっと抱きよせられた。