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誘淫接続
第1章 第九の接続
1.第九の接続
(1)
その女性は、祈っているように見えた。
一人ベンチに座り、しっかり閉じた太ももの上に前かがみで両ひじをつき、握った左手を右手の手のひらで包むようにしている。そこへ額を乗せて頭を支え、黒縁眼鏡の奥のまぶたを固く閉じていた。
歳は二十代後半くらいだろうか。
グレーのカットソー、カーディガンにひざ丈ほどの黒のスカートという地味ないで立ちだ。長い黒髪は後ろで束ねてくくっている。
心なしか、女性の身体はかすかに震えている。
時おり思い出したかのように顔を上げ、まつ毛の長いまぶたを開き、潤んだ瞳であたりを不安げに見回す。
そしてまた、祈るように手を握り額をくっつける。
その女性――麻琴は、バッグからスマートフォンを取り出して画面を見た。
そしてしばらくして、麻琴は震える手でそのスマホをバッグに戻した。
郊外の住宅地の中にあるその広い公園は、照明灯の数も少なく、十分に明かりが届かない場所も多い。
麻琴の座っているベンチは、いくつかあるベンチの中で一番照明灯の光が当たりにくい所にあった。それでも麻琴は、スポットライトのように全部の照明灯が自分に向けられている気分だった。
深夜〇時を回っており、人影も見えない。
にもかかわらず遠く左手の方にある塀の裏や、正面方向に生い茂る草木の中や、右手の方のトイレの陰に潜んでいるたくさんの視線に取り囲まれ、全て自分に注がれているような、そんな気がしてならなかった。
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その女性は、祈っているように見えた。
一人ベンチに座り、しっかり閉じた太ももの上に前かがみで両ひじをつき、握った左手を右手の手のひらで包むようにしている。そこへ額を乗せて頭を支え、黒縁眼鏡の奥のまぶたを固く閉じていた。
歳は二十代後半くらいだろうか。
グレーのカットソー、カーディガンにひざ丈ほどの黒のスカートという地味ないで立ちだ。長い黒髪は後ろで束ねてくくっている。
心なしか、女性の身体はかすかに震えている。
時おり思い出したかのように顔を上げ、まつ毛の長いまぶたを開き、潤んだ瞳であたりを不安げに見回す。
そしてまた、祈るように手を握り額をくっつける。
その女性――麻琴は、バッグからスマートフォンを取り出して画面を見た。
そしてしばらくして、麻琴は震える手でそのスマホをバッグに戻した。
郊外の住宅地の中にあるその広い公園は、照明灯の数も少なく、十分に明かりが届かない場所も多い。
麻琴の座っているベンチは、いくつかあるベンチの中で一番照明灯の光が当たりにくい所にあった。それでも麻琴は、スポットライトのように全部の照明灯が自分に向けられている気分だった。
深夜〇時を回っており、人影も見えない。
にもかかわらず遠く左手の方にある塀の裏や、正面方向に生い茂る草木の中や、右手の方のトイレの陰に潜んでいるたくさんの視線に取り囲まれ、全て自分に注がれているような、そんな気がしてならなかった。