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誘淫接続
第1章 第九の接続
 麻琴は、右手をそっと下腹に当てた。
 入れているだけなのに――蜜壷の奥と直腸の奥まで詰め込まれた二つの無機物は、まるで眠りから覚めようとしている生き物のように徐々に、徐々にふくらんできている感じがする。

 そろそろだろうか――。
 それとも、もっと後だろうか――。
 もしかしたら、来ないかも知れない。
 この右手を下腹から離した瞬間、来るかも知れない。
 ――来るなら早く……
 ――でも、やっぱり待って……
 ――来ないで……
 ――来たらどうなっちゃうんだろう……

 秋の夜長は涼しい。それなのに麻琴の全身は汗でしっとり湿っていた。
 額や鼻の頭にも汗が浮かんでいるのが分かる。

 「大丈夫ですか?」
 突然のその声に、麻琴は落雷の音を聞いたかのように、飛び上がらんばかりに全身をびくつかせた。
 声の主は初老の男性の制服警官だった。
 麻琴はできるだけ平静をよそおって静かに答えた。

 「……何でもありません、ちょっと酔いをさましていて……」
 ――今来ちゃだめ……!
 ――どこか行って……!
 「女性一人で危ないでしょ。家は近く?」
 「ええ、すぐそこで……あの、本当に大丈夫ですので……」
 ――お願い、早く一人にして……
 ――お願い……!

 「私が家まで付き添いますから、ほら、立って」
 「ほっといて!! 何していようが自由でしょ!!」
 麻琴は大声で叫んだ。
 警官は怪訝そうな表情で固まっている。
 ――あっ……
 麻琴はどんな顔していいか分からず、思わずうつむいた。
 警官は軽くため息をつき、麻琴に背を向けて歩き出した。

 その時――
 体内の二つの異物が、同時に、強烈に振動し始めた。
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