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誘淫接続
第7章 解除
 「どうして……その……私なんかを、誘ってくれたんですか……?」
 「誘いたかったからです」
 麻琴は何を言っていいのか分からなくなり、口が止まってしまった。

 聞きたいことはまだたくさんあるはずなのに――自分が情けなくなる。
 異物を入れたまま隆一と会話しているということが、さらに麻琴を自己嫌悪におちいらせる。

 「あの……私……」
 麻琴は続きを言いかけて、また止まった。
 やっぱり、歳を重ねるにつれ気弱になっている気がする。

 「言いたいことは言っちゃった方が、後悔しないと思うんです」
 隆一が静かに言った。
 麻琴は少し間を置いて、やがて口を開いた。
 「えっと……私なんて、化粧適当で、服だって白黒しか着れなくて、いっつも泥だらけで働くことしかしてない女ですよ……? 笑うの下手だし、臆病だし……」
 「それだけの人だとは思いません」
 「しかも歳上だし……」
 「産まれてからの年数を数えてるだけの数字に、意味なんてないですよ」

 麻琴は姿勢を直そうと少し足を動かした。
 下腹の中の棒が、少しずれる。
 麻琴はうつむいたままで唇を噛んだ。
 そして大きく息を吐いて、言った。

 「きっと私は……東さんが思ってるような女じゃないです……」
 「仮面かぶって生きるのは普通のことでしょう」
 「仮面……ですか」

 麻琴はふと顔を上げた。
 「……どうして、人って……仮面、かぶるんでしょうね……」
 大勢の人間が次々やってきて、目の前を通り過ぎ、そしてどこかへと歩いていく。
 麻琴はまた下を向いた。

 「楽しみたいのかも知れません、外すのを」
 隆一はそう言って上着の内ポケットからスマホを取り出した。
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