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誘淫接続
第7章 解除
(2)
麻琴の呼吸が少し落ち着いてきた。
まだ異物は腹の中に入ったままだが、それでも動いていないというだけでずいぶん違う。
麻琴は壁にもたれながら、顔を少しだけ動かして隆一を見た。
いつもよく見せるほほ笑みはないが、穏やかな表情だ。
隆一は右手に麻琴のバッグを持ったまま、左手をスラックスのポケットに入れている。
隆一の上着はスーツのジャケットだけで、コートなどは羽織っていない。
目の前を行き交う人々を見ても、同じくジャケットだけで歩いている男性の方が多い。
それでも麻琴は、自分のバッグを持たせたまま、少し肌寒い屋外で隆一をじっと立たせていることに罪悪感をおぼえた。
隆一は左手をポケットから出し、首のネクタイの結び目に指を引っ掛け、少し衿をゆるめた。
「お仕事……だったんですか……?」
麻琴は、うつむいたまま静かに口を開いてみた。
隆一はしばらく黙っていたが、やがて麻琴を見ずに前を向いたまま答えた。
「何着ていいか分かんなくなって」
隆一は再び左手をポケットに入れた。
「……ごめんなさい」
麻琴は消え入りそうな声で言った。
「何がです?」
「お断り……したかったのに」
「今も?」
「できれば……」
麻琴は、そう言ってから後悔した。今にも隆一が『ここで別れましょう』とでも言い出しそうな気がして、すぐに言葉をつないだ。
「あの……連れて行きたいって言ってたとこ、どこなんですか……?」
聞きたいことを普通には聞けないくせに、慌てるとそんなことを口に出してしまっている自分が、麻琴はまた嫌になった。そしてまた急いで言葉をつなぐ。