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誘淫接続
第2章 第十の接続
オーナーの菅原のような陶芸作家が、作品を追求するために異なる釉薬あるいはその原料を混ぜることはあるが、素人の受講生向けに決まったものを用意してある教室の釉薬に同じことをされてしまっては、使い物にならない。
その釉薬は捨てて原料の粉と水を混ぜて作り直す必要がある。
翠は薬品の袋を抱えたまま言った。
「あ、あの、これがその、いつも、いつもと違う場所にあって、それでだからえっと間違って……」
「すぐ新しいバケツに用意して。それ捨てるのはあと」
麻琴は眼鏡を指先で直しながら、なるべく感情を込めずに言った。
だいたい、違う場所にあっても袋に書いてある名前を確認するのが普通だろう。
翠はあまりにケアレスミスが多いために、麻琴も以前は丁寧に注意をしたり、同じ間違いを繰り返さないよう手順書を作ってやったりしたが、一向に効果が出ないためにいつの頃からか『この子は言っても無駄だ』とあきらめるようになった。
仕事の足を引っ張られたことなど一度や二度ではない。ある中年女性の受講生の作品を翠が誤って割ってしまった時などは、運悪くその女性がクレーマー的資質を持った人物であったばかりに、事務仕事が山積みの中で麻琴が菓子折りまで用意して、わざわざ彼女の家まで行って土下座さえしたこともある。
それは極端な部類だが、翠のために麻琴がこまごまと尻ぬぐいしてやることなど日常茶飯事で、麻琴の方もいつしか慣れてしまった。
だから、今も麻琴は特に腹を立てることもなく、淡々としていた。
「あの……水野さん」
麻琴は翠の方を振り向いた。
「その、あ、新しいバケツが、その、なくて……」
その釉薬は捨てて原料の粉と水を混ぜて作り直す必要がある。
翠は薬品の袋を抱えたまま言った。
「あ、あの、これがその、いつも、いつもと違う場所にあって、それでだからえっと間違って……」
「すぐ新しいバケツに用意して。それ捨てるのはあと」
麻琴は眼鏡を指先で直しながら、なるべく感情を込めずに言った。
だいたい、違う場所にあっても袋に書いてある名前を確認するのが普通だろう。
翠はあまりにケアレスミスが多いために、麻琴も以前は丁寧に注意をしたり、同じ間違いを繰り返さないよう手順書を作ってやったりしたが、一向に効果が出ないためにいつの頃からか『この子は言っても無駄だ』とあきらめるようになった。
仕事の足を引っ張られたことなど一度や二度ではない。ある中年女性の受講生の作品を翠が誤って割ってしまった時などは、運悪くその女性がクレーマー的資質を持った人物であったばかりに、事務仕事が山積みの中で麻琴が菓子折りまで用意して、わざわざ彼女の家まで行って土下座さえしたこともある。
それは極端な部類だが、翠のために麻琴がこまごまと尻ぬぐいしてやることなど日常茶飯事で、麻琴の方もいつしか慣れてしまった。
だから、今も麻琴は特に腹を立てることもなく、淡々としていた。
「あの……水野さん」
麻琴は翠の方を振り向いた。
「その、あ、新しいバケツが、その、なくて……」