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いつ見きとてか 恋しかるらむ
第2章 『 シフォンケーキ 』

小学6年生の夏。
わたしは、祖父母の住んでいる街にいた。
夏休みの間、祖父母と生活するためだった。
両親は仕事が忙しく、
夏休みの間は祖父母のところで過ごしてほしい。
と、母から頼まれたからだった。
当時のわたしは、仕事が好きな人だなあと思ったけれど、
今思えば、年老いた祖父母のことも心配で
わたしが行くことで、祖父母を気にかけずに済むという思いもあったのかもしれない。
祖父母の住む街は、わたしの住む県と同じではあったけれど、
交通の便が悪く、東側にあるJRの駅も西側にある私鉄の駅もバスで15分くらいかかった。
祖父母の家の前には、田んぼがあった。
小さい頃は、田植えの前の干上がった田んぼに咲いたれんげを摘んだり、アマガエルを捕まえたりして遊んでいた。
小学6年生ともなると、もうそんなことはしない。
わたしは、たくさんの本と漫画、夏休みの宿題を持って、祖父母の家に向かっている。
祖父母の家の近くには、いとこがいた。
母は次女で、母には、兄が一人姉が一人いた。
母の兄……つまりわたしの叔父さんが、祖父母の家の近くに住んでおり、息子が一人いた。
わたしのいとこだ。
高校を卒業し、大学生1年生のいとこは、一人っ子からか、わたしを妹のようにかわいがってくれた。
叔父さんや叔母さんも、一人息子のためか
「女の子はいいね~。」
なんて言って、お菓子やお小遣いをくれた。
大人としかしゃべらない環境は、家にいても祖父母のところで過ごしても一緒だと思った。
でも、自宅とは違ったところで生活するという点で、気持ちはワクワクしていた。

