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唇に媚薬
第1章 理想と現実
駅のロータリーに着いて、地下鉄の階段が近付いてきた。
路線の違う葵と、ここが別れ道だ。
「来週からまた海外だっけ?」
「……あぁ」
「商社マンって行ったり来たりでほんと大変ね。
体調に気を付けてね」
毎回同じような会話。
次に飲む日はいつも決めない。
それでも今夜みたいに会える。
この自然体がとても楽。
……いつまで続くかな。
「じゃあね」
階段の手前、街灯の下で止まった葵。
その傘からひょいっと出ようとした……
次の瞬間
「…………!」
グッと右腕を掴まれて引き戻された。
捻じれた状態で、そのまま葵の腕の中に抱え込まれる。
「……あ、おい……?」