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唇に媚薬
第8章 嫉妬姫
……へ?
……ま、待って。
ちょっと待って。
「……蘭」
私の名前を呼ぶ声、さっきよりも近くで聞こえて
葵が私の目の前にしゃがんだって分かる。
……だけど
心臓が破裂しそうで、顔が上げられない。
「無視するなよばかやろう」
「………」
「お前、蘭じゃねぇの〜?」
呆れたように溜息を漏らした葵が、軽く息切れしてるのが分かる。
……駅に、向かっていったよね?
ねぇ、もしかして
もしかしなくても
走って戻ってきたの……?
「……っ ど、どう、して……」
胸がドキドキうるさくて、恥ずかしくて
膝に顔をつけたまま聞いてみる。
「見つからないように、か、隠れたのに……」
「隠しきれてません。体半分飛び出てました」
「……っ で、でも、離れてたし」
「視力いいんだよ、誰かさんと同じで」
「………っ」
「つーか、それ以前に」
葵の大きな手が、ポンッと私の頭に乗った。
「俺がお前を見逃すわけねぇだろ」