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唇に媚薬
第8章 嫉妬姫

都心の夜景が映し出される、天井まで続く窓ガラス。
その窓ガラスと、エレベーターの側面との間に狭い空間があった。
いわゆる、ロビー端のデッドスペース。


「……わわっ!」


左腕一本で、私の体を軽々持ち上げて
足元に張られたロープを飛び越えると


「………っ」


ぶつけられる勢いで、エレベーターの壁に背中を押し付けられた。

な、なに……!?
突然のこの状況に理解が追い付かない。

閉じた目を恐る恐る開くと……


「……蘭」

「………!」


……その低い声に、ブルッと身震い。
体が一瞬で硬直する。

キラキラ眩い、宝石のような光の粒を背負って
薄笑いを浮かべる葵が、妖艶な瞳で私を見下ろしていた。


「随分楽しいことしてくれたな」

「……っ あ、あお……」

「言ってみ?
お前のこの手、何してた?」


私の右手を取って、顔に近付けると
手の甲にキスを落として、そのまま舐め上げられる。


「……言えよ、蘭」

「………っ」

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