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唇に媚薬
第1章 理想と現実
「……っ は……っ」
下唇を吸われてから、ようやく離れた葵。
街灯の下だけど、傘に覆われているからその表情が読み取れない。
「……か、かの……」
「…………」
「か、彼女……」
放心しながらも、何とか口にしたけど
頭の中がパニックを起こしてるせいで、うまく喋れない。
「付き合ってる彼女、いるでしょう……?」
「あぁ」
「それなら、こんなことしたら、だ、ダメだよね?」
「そうだな」
そうだなって……
驚く程冷ややかな視線が、余計に私の身体を火照らせる。
「……他に質問は?」
「…………っ」
私の身体から手を引いて、じっと見下ろしてくる葵。
……ねぇ、違うよ、逆でしょ?
今のキスを説明しなさいよ。
これ以上私に何を言わせようっていうの?
言葉はいくらでもあるのに、どうしてか声にならない。
心臓がドキドキとうるさい。