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唇に媚薬
第8章 嫉妬姫
葵が叫んだと同時に
「ゆうた~~! エレベーター来たわよ~~」
「「………!!」」
女の甲高い声。
葵と私が同時に顔を上げると
高そうな毛皮のコートを羽織った若い女性が、ひらひらと手を振っていた。
「……って、あら? 誰……」
「今行くぅ!」
赤ら顔の母親らしき女性が、私達をじっと見つめたけど
タイミングよく男の子が走り寄っていく。
「なにしてたの、あんた」
「しゅらばを見たの」
「修羅場? なにそれ……」
そんな会話を残して
突如訪れた嵐は、瞬く間に去っていった。
「「…………」」
修羅場っつーか
むしろ墓場だよ。
……どうしてくれるの、この空気。