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唇に媚薬
第9章 ヤキモチ王子
あー愉快愉快。
って別に何も解決してねぇけど、軽い足取りでデスクに戻る。
席には座らず、すぐにカバンを持ち出して
広げたままの書類と、タブレット端末やら会社携帯やらを投げ入れていると
「……瀬名、さん」
「………!」
隣りから、か細い声が聞こえてきて
その時点で佐伯が隣りに座っていたことに気付いた。
「お帰りなさい、遅かったですね」
ファイルを閉じて、佐伯はイスごと俺の方に体を向ける。
「悪い、6時に戻るっつっといて」
「いえ……長時間お疲れさまでした」
「不在の間、なんかあったか?」
「はい、報告したいことと、あと何件か電話があって……」
「どっから?」
「あ、あの、大丈夫です。
……あとで、まとめてメールしておきます」
「………!」
俺のカバンをちらりと見て、佐伯はニコッと笑った。
その笑顔の裏で、戸惑ってる様子が垣間見れる。
……今までだったら、俺が先に帰るなんて絶対にありえねぇもんな。