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唇に媚薬
第9章 ヤキモチ王子
「……瀬名、帰るぞ」
何故か呆れ顔の蓮が、立ち上がって溜息を漏らした。
周りの野郎達も同じ表情をしているが、俺にとってはタイミングのいい助け舟だ。
こっちは安堵の溜息をついて、カバンを持つと
「佐伯、ごめん。俺も今日は帰るね」
「は、はい! お疲れ様でした」
コートを羽織りながら話しかけた蓮。
デスクが向かい合わせの佐伯は、慌てて体を正面に戻す。
「出張中の、瀬名の穴は俺が埋めるよ」
「………!」
「今月はずっと国内だから。
フォローするから、遠慮なく言って」
……ニコリと笑った蓮につられて、心から嬉しそうに微笑む佐伯。
はい、出た出た。
聞いたか?今の。
俺が佐伯だとしても微笑むっつーの。
声が穏やか。
例え方が上手。
言葉遣いが上品。
結論。
いくらプリンスを気取ったところで、本物には敵わねぇ。
「じゃあな、お疲れ」
佐伯の後ろを通過しながら、雑に言い放つ。
こんなやり取りしてるから時間食っちまったじゃねーか。
蓮も俺に合わせて歩き出した……その時
「せ、瀬名さん……っ」