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唇に媚薬
第9章 ヤキモチ王子
これまたオーバーリアクションで、佐伯がぶんぶんと両手を振る。
「その話はもう、忘れてください……っ」
「……いや、そーいうわけには……」
「大丈夫です。
もう、ちゃんと分かって、ますので……」
一生懸命笑おうして、ふいっと視線を外した佐伯。
「………」
……マジで終わってんな。
己のアホさに心底嫌気がさしてきた。
一瞬でも苛ついた自分を殴りたい。
優先すべきは蘭だけど
大事な仲間の1人を蔑ろにしていいわけがねぇ。
「……佐伯」
俯く佐伯の元に戻って、向かい合って
その小さな肩をガシッと掴んだ。
「……! せ、瀬名さ…?」
「3月20日に帰る。
真っ先にお前に連絡する」
「………っ」
「佐伯、挽回させて。
約束は必ず守るから」
……って、言ってみたはいいものの
この身長差でこの体勢、なんか脅してるみてぇだな……
今更気付いて、恐る恐る手を外すと
「……嬉、し……」
「………!」
佐伯は、やっと俺にも笑顔を見せた。
「瀬名さん、ありがとう。
……待ってます」