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唇に媚薬
第9章 ヤキモチ王子

…… “ しまった ”


失敗に気付いた時に発する言葉が、ふと頭に浮かんだ。

雨が降り続いた2月、抑えきれなくなった感情が俺を動かしたあの日
BARで飲んでいた時の、蘭の台詞を思い出す。


“ 他人から始まるのよ。
突然の出逢いで、でもそれは運命なの ”


……蘭が求めていた出逢い
まさか……


「瀬名、紹介してくれないの?」


ハッと我に返ると
俺の隣りで蓮が困ったように笑っていた。

蘭もいつの間にか立ち上がっていて、俺と蓮を交互に見ている。


「………」


……俺、どのくらい呆けてた?
そして何勝手に被害妄想を……


「……あー」


……チラッと見ると、途端に背筋を伸ばした蘭。

つーか今まで、恋人ってもんを誰かにちゃんと紹介したことなんてあったか?
いや、ねぇな。
大体は女の方から自ら名乗ってくるから、必要無かったんだ。

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