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唇に媚薬
第9章 ヤキモチ王子
「行くぞ」
蓮を放置して、蘭の肩に腕を回して……
って、ランとレンとか響きも漢字も似すぎで紛らわしいな!
そんなどうしようもねぇことにも怒りを感じて、立ち去ろうとすると
「彼女さん」
後ろから呼ばれて、蘭と同時に振り返る。
「……ゲッ」
……いつの間にか
遣り取りを見ていた同僚達が、蓮の周りに集まってきていた。
俺が掴んだ襟元を直して、蓮はふっと笑う。
「睡眠と、食事。
そして何よりも……瀬名の笑顔を、貴方は取り戻してくれた」
「………!」
「その男、自分でも限界を超えていることに長い間気付いてなくて
かなり危険だったから、心配してたんです」
……切なく笑うそいつらを、なぜか見続けられなくて
蓮が話している途中から、俺は再び体を前に戻した。
「俺ら戦友達を
いつも背中で引っ張っていくような奴なので」
「………っ」
「孤独って勘違いしてる不器用なそいつを
これからも宜しく頼みます」
……俺の腕をぎゅっと握って、蘭が大きく頷いたけど
何かがこみ上げてきて
俺は振り返ることが出来なくて
そのまま無言で、会社を後にした。