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唇に媚薬
第9章 ヤキモチ王子

……渦巻く、感情。

今までも、我ながら感心するほどの一方通行を続けてきたけど
こんなに固執した想いになったのは初めてだ。


「……葵」


上着を脱ぎ捨て、ネクタイを緩める俺の後ろから
口元を片手で押さえながら、蘭がひょっこり顔を覗かせる。


「ちょっとご機嫌ナナメ?」

「………」

「もしかして、ヤキモチ……とか?///」


まるで、猫がゴロゴロと喉を鳴らしてるみてぇに
俺のシャツを掴んで、上目遣いの蘭は明らかに上機嫌。

……蘭を好きだという気持ちと向き合ったのは、働き出してからで

それまでの女関係は、かなりいい加減な学生時代を過ごしてきた俺にとって
自分の女に対する独占欲なんて、毎度ゼロに近かった。

そんな俺が
いい歳した男が
相手にバレバレな程、嫉妬心を露わにしてるなんて


……この心と体、どれだけこの女に惚れてるんだ?

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