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唇に媚薬
第9章 ヤキモチ王子
「……お前、楽しそうだな」
シャツを持つ蘭の腕を掴んで、上に上げさせる。
「葵は、機嫌悪そうね?」
「……至って普通だけど」
「ふふっ、そうかしら♪」
反対側の手を俺の頬に添えて、ニコニコと笑う蘭。
2日前の土曜の時点では、グリッターでギラついていたその爪まで
淡いベージュのグラデーションに変わっていた。
「なんで、いきなり系統を変えたわけ?」
「……えっ?」
よく見りゃ化粧も違う。
控え目なグロスを艶めかせて、蘭は急に焦りだした。
「べ、別に意味はない……わ」
「……ふーん」
「気分転換よ。
ほら、もうすぐ春が来るし……」
視線を逸らして、蘭はスルリと俺の手から逃れると
途中で寄った店の袋から、缶ビールを手に取った。