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唇に媚薬
第11章 純真なカノジョ

* * *


「ちくしょー、あの俺様MDめ!」


口の悪い男が仕事の相棒で、同じく口の悪い彼氏を持つと
その口調が伝染してしまうらしい。

……アパレル界のMD、すなわちマーチャンダイザーは
商品開発から販売計画、予算などを総合的に管理する仕事。

どっかからヘッドハンティングされてきた姫宮さんは

入社4年目にして、そのズバ抜けたセンスと適応能力により
国内大手セレクトショップの本部にて、既にカリスマ的な地位を築いている。


「そのカリスマの陰で。
こんな優秀なアシスタントがいることを、皆様ご存知なのかしらね!」


……いや
もう私の役職は “ 姫宮のパシリ ” なんじゃないだろうか。
地下鉄の改札を抜けて、ズカズカと通路を進む。

駅近とはいえ、アウター3着も持たされるんだから
帰りはタクシー使ってやる!


閉店まで、あと20分。
華やかなブランドロゴが光る、看板の下に着いて
お店の自動ドアが開いた。

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