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唇に媚薬
第11章 純真なカノジョ

店長が私の肩越しに視線を上げて、横を通り過ぎる。
お客様がいらしたらしく、レジ前に向かったようだ。


「大変お待たせ致しました。
お決まりで宜しいでしょうか」

「……は、はい……」

「ありがとうございます。
ではお預かり致しますね」


その会話を背中で聞きながら、奥のカウンターの卓上時計を見ると
ちょうど閉店の7時ジャストを表示していた。

店長のお陰で片手で持ち運べるし、真面目に地下鉄に乗って戻ろう。

今夜は長くなりそうだから、途中で夜食でも買おうかな。
仕方ない、あの鬼MDの分も差し入れてやるか。

私ってばやっさしぃ〜♪


「……よしっ」


紙袋を持ち直して、くるっと体を回す。
接客中の店長の、邪魔にならないように会釈して……

……そう

通り過ぎようとした、のだけど・・・

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