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唇に媚薬
第11章 純真なカノジョ

突然

体が金縛りにあったように動かなくなって
手足を交互に出した状態で、私は固まった。


「………」


同じく

商品を包んでいる店長の前で
真っ白なコートを着たお客様が、私を見つめている。


「………」


……えっと。
あ、はは?

あはは〜
って、いやいや、笑ってどうする。

ま、ま、まずは落ち着いて状況整理しましょうか。

って、言ってるそばから
あ、汗吹き出てきたんですけど……!


「………っ」


その小さな体が、小刻みに震えていて
彼女の顔にも明らかな動揺の色が浮かんでいた。


……って、え?
なぜ?

あなたと私は、初対面なはず……


「ん?」


私の手から滑ったアウターが、ゴトッと床に落ちて
その音で、店長が私に気付いて振り返る。


「早坂さん?」

「………」

「……? 大丈夫?」


……店長。
早坂蘭、大丈夫じゃありません。
ただいまパニックに陥っております。


……なぜなら



“ 営業事務なんだよ。俺の右腕 ”


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