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唇に媚薬
第11章 純真なカノジョ
「私、佐伯と申します」
「………」
「って、誰って感じだと思いますが…」
……いえ、知ってます。
よく知っています。
「○○商事という会社で、事務職をしておりまして」
「………」
「きょ、今日は早めに上がれたので、買い物しようかなって……」
……確かに
あなた達の勤める丸の内から銀座は近いし
7時でも他のお店はまだ営業してるし
……あの
でも、一体なぜ……
「ってごめんなさい! そうじゃないですよね!」
いきなり両手で自分の髪をわしゃわしゃと揺らしたかと思うと
顔を真っ赤にしながら、彼女は俯いた。
え、ど、どうしよう。
なにこの空気……!
ダラダラと流れる汗を感じながら、直立不動で固まっていると
「……見ちゃった、んです」
「へっ!?」
「あ、あの日……エントランスの前で」
俯きながら、彼女はポツリと呟いた。
「……忘れ物したって言って、戻った瀬名さんを
私、お、追い掛けちゃって……」
「………!!」