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唇に媚薬
第11章 純真なカノジョ

……ガーンガーンガーン……ってこの音はなに?

せ、瀬名さんって呼んでるんだ……
って別に普通だし
専属アシスタントなんだから当たり前じゃない。


「………」


……“ あの日 ” というのは
間違いなく、あの夜のことだ。

石像に隠れて覗いていた私の元に、葵が戻ってきてくれた日。


“ 話があるから一緒に帰りたいとか言われて ”


「……ごめんな、さい」


突然ボソッと謝った私に、彼女は勢いよく顔を上げた。

……切羽詰まった悩みがあるって、葵が言ってたのを思い出して
ものすごく後ろめたさを感じて、気付いたら私は頭を下げていた。


「私、早坂蘭といいます」

「………!」

「あなたが葵のアシスタントだってことは
……あの日、葵から聞きました」


この発言に、彼女が大きく目を見開く。


「あ、そ、そうなんですね!」

「……はい。
お2人が会社から出てきたところ、見てまして……」

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