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唇に媚薬
第12章 相棒流儀
「で、どうしたんだよ」
適当に頼んだツマミを、器用に取り分けながら
姫宮さんは淡々と続ける。
「こう見えて俺、結構動揺してるから」
「………!」
「女の涙なんて見慣れてるけど
いつもドライなお前が泣くって……相当だろ」
……ぶっきらぼうな口調にも、優しさを感じて
きゅっと胸がしめつけられた。
今まで特に気にしてなかったけど
この人、やっぱりどこか葵に重なるところがあるんだよね。
「……あの……」
「うん」
「……この歳になって、恥ずかしいんですけど」
周りはこんなにも騒がしいのに
姫宮さんが作りだした心地良い空気によって、心の声が引き出されてしまう。
グラスをテーブルの上に置いて、私は小さく溜息を漏らした。
「不安なんです。
……彼氏のことが、好き過ぎて」