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唇に媚薬
第13章 同じキモチ
* * *
腕時計の針が、夜の10時半をさしている。
駅から少し離れた、洒落た街灯の周りを囲むガードレール。
自販機で買ったホットコーヒーを片手に、私はそこに腰掛けた。
「……シアトルは、朝の6時半」
スマートフォンというのは便利で、検索すればすぐに現地の時刻が表示される。
時差、16時間。
ほんと遠い所にいるんだな……
“ 葵、おはよ ”
早朝に、かなり迷惑だと思うから
とりあえずメールを入れてみた。
って、出張中に連絡すること自体迷惑なのかもしれないけど
溢れる想いが、私の指を勝手に動かしてしまう。
「……はぁ、なんかもう緊張する……」
さっきとは違うドキドキ。
缶コーヒーをぐいっと飲んで、深く溜息をつくと
白い息が夜空へと舞い上がった。
都会の明かりと厚い雲によって、星は見えないけど
小さな無数の輝きが、私の目には映っている気がする。