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唇に媚薬
第14章 涙の先に

「~~ビ、Billion……!!」


両手でしっかりキャッチしながらも、後輩は泡を吹いて
崩れるように椅子に腰を下ろした。


「アホ、10億もいってねぇよ」

「で、で、でも!
色んな相乗と利益を算出したら……っ」

「お前、実務翻訳得意だったよな」


周りの拍手を無反応で流して
他の書類をデスクの中に戻しながら、淡々と続ける。


「それ、明日までに添削して仕上げておいて」

「えっ!?」

「部長への報告書。
機内で変換してたんだけど、途中で諦めた」

「~~~!」


む、無理っすよ~~と情けねぇ声で喚く後輩を睨んでから、横に目を向けた。

2時間前、空港から電話して
待ってろと伝えておいたその席に……当人の姿が見えない。


「おい、佐伯どこ行った?」

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