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唇に媚薬
第14章 涙の先に
……佐伯と蓮……
「……そういや、俺の穴はあいつが埋めてたんだっけか」
誰もいないエレベーターに乗り込んで、思わず独り言。
2週間前の遣り取りを思い出した。
フォローすると言っていた蓮が、うまくやっていたようで
出張中に佐伯から連絡が来ることはなかったけど
3度目の正直、約束は覚えている。
“ 瀬名さん、ありがとう。 待ってます ”
「………」
15階に到着して、2フロア吹き抜けのラウンジへ進む。
螺旋階段の手前に立って、下を見渡すと
「……いやがった」
ガラス窓に沿って並べられた、テーブル席の1番奥に
尖らせた黒髪の男と向かい合う、巻き髪の女が目に入った。
階段を降りて、会話をしている2人に近付く。
「………!」
先に気付いたのは、正面に座っている蓮。
視線を上げると、微笑みながら俺に向けて手を挙げた。
「瀬名、お帰り」