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唇に媚薬
第14章 涙の先に
「………」
ただいま、とか
俺はそんな風に爽やかに返せるキャラじゃない。
無言で蓮と佐伯の間の椅子を引く。
春が近付いてきて、大分日が延びたようで
目の前に広がるビル群の隙間を、夕陽が赤く染めていた。
「予言より3日早かったな」
手に持っていたカップをテーブルの上に置いて、蓮が腕時計を見る。
「外堀を埋めてきた成果が、意外と早く現れたもんで」
「お、もしかしてトレード成立?」
「あぁ、チェックメイト」
「「………!」」
「蓮、今月は俺の勝ちだ」
俺の返事を聞いて、両側の2人は対照的な態度を見せた。
「やったな、オメデトウ」
「~~ほほほんとですか!?
す、凄過ぎ……!!」
予想通りの反応。
嫌味無く、さらりと笑顔で褒める蓮に対して
椅子から飛び上がりそうな勢いで、口元に両手をあてる佐伯。
……だけど
右側に体を向けた俺は、思わずその顔を二度見した。
なぜなら
「……佐伯、お前その目……」
「………!」
「なんで赤いわけ……?」