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唇に媚薬
第14章 涙の先に
明らかに涙の形跡が残る顔を、じっと見つめると
もげそうなくらい、佐伯は首を左右に振った。
「な、なんでもありません!」
「蓮、お前……」
「〜〜違います!
な、泣いたのは鈴木さんのせいじゃありません!」
「………」
……泣いてたんじゃねぇか。
蓮に話しかけたのに、うろたえる佐伯が遮ってきて
少しイラつきながら2人を交互に見比べると
「どんな場面でも
女性に泣かれると、胸が締め付けられるよな」
穏やかに微笑んだまま、蓮が口を開く。
「だけど、俺のせいじゃないよ」
「……じゃあ、誰のせいだよ」
「誰のせいでもない。
だから自然に涙が溢れてしまうんだ」
「………!」
「な、佐伯」
蓮が優しい眼差しを向けると
空のカップを両手で握って、佐伯は小さく頷いた。
……意味不明。
なんなんだよ、一体。