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唇に媚薬
第14章 涙の先に

「あ、の……」


俺と目線を合わせないまま、佐伯が小さく口を開いた。

やっと本題突入。
椅子に座り直して聞き入れ体勢に……って、そういや・・・


「瀬名さん、実は私……」

「ちょっと待て」


佐伯の言葉を一旦止めて、左側に顔を向ける。


「……蓮。
なんでお前はここにいるわけ?」


こーいう時に空気を読むはずの蓮が、優雅にコーヒーを飲んで居座ったままだ。

俺に話があるっつってんだから、この辺で去ってもいいんじゃねぇの?
という意味を込めて送った視線も、爽やかに微笑んで流される。


「いいから、続けて」

「は?」

「俺のことは気にしないでいいよ」

「気にするっつーの。
大体蓮、なんでお前……」

「わ、私がお願いしたんです……っ」


裏返った声で、また佐伯が割り込んでくる。


「私が鈴木さんに……傍にいてくださいって頼みました」

「……なんで?」


「ぼ、暴走しない為に……です」


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