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唇に媚薬
第14章 涙の先に

・・・意味不明。

主語の抜けた会話ほど、不毛で無駄なものは無い。
なんで俺はさっきから、右と左を交互に見なきゃならねぇんだ?


「はは、そんな怖い顔するなって」


1人だけなぜか余裕のある蓮が、疑問だらけの俺に向けて続ける。


「早い話、俺は “ 通訳 ” ってこと」

「……通訳?」

「そう。代弁が必要なんだ」

「……何の?」

「佐伯の心の声」


はぁ?


「……理解できねぇ。 何言ってんのお前」

「つまり、2人の意思疎通の手助けだよ」

「あのな、蓮……」

「いいから、そんな深く考えるなって」


俺らの遣り取りによって、オロオロしている佐伯を見て
大丈夫とでも言うように、蓮はニコリと笑った。


「佐伯、続きをどうぞ」

「……! は、はい……」

「瀬名、心配するな。
俺のことは副音声だと思えばいい」

「~~思えるかボケ!」


何が副音声だ!
てめぇのせいで余計に混乱してるっつーの!

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