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唇に媚薬
第14章 涙の先に
「……すみません、鈴木さん」
テーブルに額が付きそうな程、深く頭を下げる佐伯。
一貫して穏やかさを保ったまま、頷く蓮。
「……で、なに」
ツッコミたいことは山ほどあるが、とにかく話を進めないと帰れねぇ。
俺は仕方なく乗り出した身を元に戻した。
「……私の相談をさせていただく前に。
瀬名さんに、聞きたいことがあるんです」
「あぁ、だからなに?」
いいから早く言えよ。
前置きが長すぎて、半分ぶっきらぼうに答えると
意を決したように、佐伯は真っ赤な顔を俺に向けた。
「……もし、瀬名さんのす、好きな女性(ひと)が……」
「………!」
「別の男の人と……
い、いえ、そうじゃなくて……」
「………」
……想定外の出だしで、正直驚いて
佐伯を見返すと、またしても瞳が潤んでいく。
ぎゅっと組んだその小さな手が、僅かに震え出した。
「……彼女さんが
瀬名さんと同じ気持ちじゃなかったら……どうしますか……?」