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唇に媚薬
第14章 涙の先に
……いやいや、違ぇだろ。
「なんだそりゃ。訳せてねぇぞ?」
「いや、ちゃんと置き換えたよ」
その言葉で
佐伯は肩を震わせながら、ゆっくりと体を正面に向けた。
蓮も佐伯に視線を戻す。
「……佐伯、さっきも言ったけど
相手を傷付けるような聞き方をしたら駄目だよ」
笑顔を消して、蓮は真剣な表情で続けた。
「それに
佐伯が本当に伝えたいことは、そうじゃないだろ?」
「………!」
「……難しいよな。
“ 抑える気持ち ” と “ 伝えたい想い ” 」
「………」
「どちらも本心であり、紙一重だから
言葉にするのは簡単じゃないって、よく分かるよ」
……蓮の声が、段々と穏やかになって
その精悍な顔に優しさが戻る。
「だけど、相手の幸せを願うって決めたんだ。
俺にちゃんと言えたんだから、大丈夫」
「………っ」
「……辛いけど
頑張って、自分自身をコントロールしようね」
蓮がそう言って微笑むと
佐伯の瞳から、一粒の涙が零れ落ちた。