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唇に媚薬
第14章 涙の先に

「……悪かった」

「………」

「佐伯はもちろん
蓮、お前にも……」


“ 女心を分かっているようで、全然分かってない ”

……そういや昔、適当に付き合ってた女達によく言われてたな。
蓮に言われた残念な男って代名詞がぴったりだ。

大きく息を吐きながら、天井を仰ぐと
溜息混じりの笑い声が隣りから聞こえてきた。


「……まぁ、でも。
“ お互い ” ちゃんと気付いてよかったな」


左に首を傾けると、その顔はいつもの穏やかな表情に戻っていた。


「大丈夫」

「……!」

「佐伯は大丈夫だよ」

「………」

「ちゃんと自分で第一歩を踏み出したから。
俺のフォローも必要ないくらい、最後はいい目をしてた」


……蓮はそう言ってイスから立ち上がると
俺のスーツのポケットを指差した。


「行けよ。待ってんだろ」

「……けど」

「いいから、早く行け。
お前に今必要なのは、佐伯を気遣うことじゃない」


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